インドネシアには1000を超える島々が集まっている。
世界遺産の一つである世界最古かつ最大の仏教遺跡「ボルブドゥール」は
ジャワ島のかつて王朝が栄えた古都として名高いジョグジャカルタから
一時間程奥地に入った周囲を火山に囲まれた緑の盆地に建っていた。

カンボジアのアンコールワットに先立つこと約300年、
ヨーロッパの大聖堂建立よりはるか400年も前の8世紀に
「ボルブドゥール」は建てられていた。   
しかしながら、いくつもの戦い、火山噴火・地震など
天変地異によって、あまりにも長い1000年以上もの間、
密林と火山灰に隠されていたのだった。

  幻想的かつミステリアルな夜明けの月明かりに照らされた「ボルブドゥール」。私は、頂点
を目指すにつれ悟りが開かれ、永遠の幸せが得られるとも言われるその頂上へ向かった。


夜明けを迎えた「暁のボルブドゥール」は、
失われていた人間本来の姿を呼び覚ましてくれた。
いつになく新鮮な空気を感じ、南国の涼風が心を開いてくれた。
時間に追われ忙しくないと何か物足りなく感じる日々は、
もうそこには無い。

タイムトリップしながら生きることの教えを肌で感じ、
ありのままを自然体で受け入れられそうだ。




「ボルブドゥール」の遺跡を見るためだけに建てられた「アマンジオ」。
仏教の宇宙観を表すと言われている寺院建築様式を取り入れ建てられた、 この究極の楽園は
周囲を密林と一部ライステラスに囲まれ、
静かに時を優しく刻み、遺跡と一体化するように建っている。


離れ36室のみ。部屋つきバトラーがゲストの一番望むことを大切に考えてくれる。
全てのサービスはオーダーメイドとなり思い描くように要望は実現していく。

心のこもったおもてなしがそこにはあり、ホスピタリティに感動する。
部屋にはスケッチブックと水彩絵の具が
置かれていた。目に映る時の流れや自然に
帰った自分の心の表現を描き留めておきたくて
久しぶりに絵筆を執った。


自然光を受けながらガゼボで昼食をとる。
ウエルカムの時にサーブされたジンジャーティーの少し舌を刺す様な
から味と、ほのかな蜂蜜の香りがなんとも言えなく気に入った。

プライベートプールでは、幼少時の気持ちに戻り、
もちろん!裸で思いのままに泳ぐ。気取りのない、まるで我が家に
帰ったようなリラックス感でいれる。
誰にも邪魔されない、まさに至福のスローバカンスなのだ。


ライブラリーではバティック柄の写真集を借りてみた。
ジャワ島はバティックの本場と言われている。

天然染料で染め、一枚一枚のバティックには祈りを込めた
ストーリーがある。
私の実家には織物機械があり、姉が以前草木染めなどをして、
それを紡いではた織りをしていたが、なかなか現実の生活の中では
難しく、今では倉庫に入ってしまっているが、
姉は時間に余裕が出来たらゆっくり楽しみたいとよく話している。
インドネシアのテキスタイルは伝統を守り、
今もなお日常生活において最も慣れ親しんだ必要不可欠なもので
あり、完成するまでの時間と思いは、かけがえの無いものだと思う。


インドネシア共和国が独立して以来、旧暦の5月の満月の夜にワイサックと
呼ばれる釈迦の誕生から涅槃までを祈る祭りがボルブドゥールで
行われているそうだ。

次回は厳粛な雰囲気に包まれた月の光に輝くボルブドゥールを
訪ねてみたいと思う。


ここではピクチャーフレームは必要ない。目をつぶると焼きついた光景が脳裏に鮮明に描き出されてくる。
自然環境と人間の結びつきの深さに改めて目覚めることができたスローな時間だった。

文・写真撮影 勝部 江里