VOL.047



 カリフォルニアには革新的な経営者が多い。それもサラリーマン社長でなく、起業家精神に満ちた社長や最高経営責任者に多い。もちろん中には創業者や大株主でない雇われ社長でも優れた理念で優秀な企業成績を上げている経営者は米国の他の州でも、また日本でも少なくない。

 しかし最近耳にしたカリフォルニアの有名企業二社の例は新時代の経営者のあり方を指し示しているように思う。まずは有名なディズニーである。長年超優良企業として知られて来たが、目先の経営数字を大切にする経営者の下、ディズニーが持っていた創造力や挑戦精神が失われて行った。その結果、一時は企業買収や事業拡大で好調に見えた経営も徐々に悪くなって行った。

 そこに救世主として現れたのがアップル創業者ならびに画期的なアニメーション制作会社ピクサーの最高経営責任者のスティーブ・ジョブスである。彼がディズニーの大株主になり、制作最高責任者となる事で、沈滞したディズニーの社内にまた新たな活気が生まれていると言う。そしてその彼が最初に行なったのが、マクドナルドとの広告タイアップ契約の解消である。この解消でディズニーは年間120億円を失う事になる。現在米国では子供の肥満の原因になっているとして、ファースト・フードに対する批判の声が高い。健康で明るい社会を目指すディズニーがタイアップする相手としては相応しくないと言うのである。ディズニーは何がより良い社会を実現する方向かを考えながら、今後も経営の方針を決定して行くようである。

 もう一つの企業はグーグルである。最近同社は今後シリコンバレーのマウンテン・ビューにある本社の必要電力の3割を太陽光発電でまかなうと発表した。その経費は1千万ドルだと言う。これは地球環境に企業として率先して良き行動を取りたいとの経営者の判断である。9,200個のソーラー・パネルを本社の屋根に貼り、その発電量は一般住宅1千軒の電力をまかなえる程であると言う。同システムを構築するのはロサンゼルスの北、パサデナ市にあるエル・ソリューションズと言う会社である。同社にソーラー・パネルを提供するのは日本企業である。

 一時は超優良企業と言われた大企業が業績を悪化する例が日米のみならず欧州などでも増えている。創業者が抱いていた夢や創造力や挑戦の精神が消え、株価の維持に狂奔し、その内に企業の力が弱まって行く。私が渡米した1960年代、ビッグ・スリーと呼ばれた米国の三大メーカーは日の出の勢いであった。それが現在では苦境にある。数字合わせを優先する余り、長期的視野や創造する力を育てて来なかった精である。やはり社会のために貢献する企業、世の中の役に立つ企業になろうと努力する経営者こそ、これからの新時代に求められ、そして成功企業のリーダーになる資格の人々なのだろうと感じている。




鶴亀彰(つるかめあきら)
60年安保で日本中が騒然とした年に京都外国語大学入学、東京オリンピックの年に卒業し、国際化の掛け声に率先して乗り、旅行会社「ニューオリエント・エキスプレス」に入社。1966年に同社ロサンゼルス・オフィスに駐在を命ぜられる。
2年間の駐在辞令が、13年に延びる。大手米国企業や日本からの進出企業の日本へのディーラー招待旅行や各種国際会議等の営業ならびに運営に従事。1979年に思うところあって一年間休職し、家族と共に世界旅行。最初は優雅、後半は貧乏旅行。ロサンゼルスに戻り、日米のビジネス進出をコーディネートする会社をスタート。新しい技術の開発に燃える日米の若者達に混じり、彼らのベンチャー・ビジネスの支援に励む毎日。
しかし昨年還暦を過ぎ、息子も育ち、現在は放浪の想いが浮かびつつあるこの頃である。妻一人のほか、庭の巣箱に集まる小鳥達17匹が現在の同居家族。趣味は旅行、読書、映画、親しき友との団欒。酒も少々。