VOL.034



 胃の検査の好きな人は少ないと思うが、わたしほど嫌いな人も珍しいかもしれない。胃にポリープがあるので胃カメラを飲むように言われて、はや5年。嫌だ、行かなくては、でも、やっぱり嫌だ。でも、胃が時々重い、もしかして・・・・と自問自答しているうちに5年がたってしまった。
 気にしているなら検査してもらったほうが楽なのに、のどに管が通るのを想像しただけで行く気になれなかったのだが、先日、とうとう覚悟を決めて検査に行ってきた。
 その話を知人にしたところ、ものすごく驚かれた。なんでも、彼女は検査大好き人間で、毎月のようになにかしら検査してもらっているというではないか。「検査って楽しいじゃない。なんでもないことがわかるとうれしいじゃない」ですって。そういう人もいるのですね。
 本当は、検査するのもしないのも個人の自由なはずだが、わたしは、1年に一度は検査をしなくてはならないという気にさせられる。会社員の人は、定期的に健康診断を受けさせられるから、やらざるをえないだろうが、わたしは自由業なので、やりたくなければやらなくていいはずなのにである。
だから、手遅れも自由業に多いのかもしれないなあ。でも、どうなのだろう。仮に検査をしなかったことが原因で手遅れになったとしたら・・・それはそれで、いいのではないかとわたしは思っている。なぜなら、それがその人の生き方だからだ。どんな場合においても、尊重すべきは、その人の生き方だというのが、わたしの考え方だからだ。
 わたしは二度と余計な検査はしないだろう。どこかが痛かったら医者にいくが、それ以外はもう絶対に行かない。そう誓ったとたんに、胃がスッとしてきたのは気のせいだろうか。



松原惇子(まつばらじゅんこ)
1947年埼玉県生まれ。昭和女子大学卒業。NY市立クイーンズカレッジにてスクールカウンセラーで修士課程取得。一貫して女性の生き方を応援するフィクションを発表し、女性達に元気を与えてきた。現在は、執筆活動、セミナー、講演会など「元気の配達人」として全国を飛び回っている。個を生きる女性のための「SSSネットワーク」を主宰。
著書に、『女が家を買うとき』(文春文庫)、『クロワッサン症候群』(文春文庫)、『そのままの自分でいいじゃない』(PHP文庫)など多数。

【松原惇子のホームページ】 http://member.nifty.ne.jp/maju/